詩 『心を狙え、ジミー・ルナンド』
君に家庭を与えたら
一日で富を肥やす事ができるだろう。
だが、君が富を肥やす事が出来ても
半日でその金を使い果たすだろう。
つまり君には、家族が何であるか知らないのさ。
金曜日の夜、ソファーにどっかり座った借金取りのジミー・ルナンドがそう言った。
僕は悔しくて、そのようなことは絶対にない、と怒鳴った。
しかし、銃口を向けられているのは僕の方だ。
どんなにあがいてみても、彼の引きがねの方が勝っている。
僕は、そのうち、真っ暗な世界に墜ちていくんだ。
そう、あの頃、ハルピンでみた夜景が、
僕らにとっての最高の人生哲学だったのさ。
今はもう、そんな素晴らしい愛を抱きしめることもなくなった。
一日、五◯セントの仕事に精をだし、
酒を飲めばしみったれたイタリア空軍の悪口ばかりさ。
髭は伸び放題だが、頭はすっかりと寂しくなっちまった。
それでも、君の夢を今でも日記に書いて持ち歩いているよ。
悪い男に腹を殴られた時、
その日記の厚さが役に立って怪我もしなかった。
ああ、エイミー
僕を救いたまえ。
銃弾に倒れそうになっているこの僕を夢の力でもう一度、
もう一度、ジミー・ルナンドから守ってくれ。
僕にはもう、家庭を持っても富を肥やすことはできないが、
そのぶん、君のために命の限り、愛を語るよ。
そうして、子供が出来たら、
皆で、命の話をしよう。
君たちの父親は、最後まで自分を信じた。
そう、信じるものは、誰にも家族がいる。
僕は最後に気付いたよ。
エイミー。
ただ、君を愛している。