詩「即興詩人」
こんな日が来るなんて思わなかった。
君が10番目の列車で帰って行った朝
僕はニューヨークタイム誌を片手に
ある記事に目を奪われていた。
君がロジャー・シーンと結婚したという記事だった。
白き花嫁は、愛の微笑みに喜んで
僕にこう言ったように思えた。
「あなたは、幻を抱いたのよ」
昨晩の君は確かに、触れても体温のない肌をしていた。
君は僕を愛しているかい
そう、突然聞いてしまうほどの業火を胸に
僕は遂に、君をものにすることができなかった。
ああ、空を見上げれば、労働対価の同じビルディングが連なるニューヨーク。
夢なんてものは、みんな札束に替えてしまった。
それでも、命までは金に替えられなかった。
10番列車で僕も、そろそろ行こう。
夢を捨てて、身を切るような生活はもうやめだ。
皆よ、自らの旗を持て。
そうして、僕に続け。
僕は、詩人
そう、即興詩人